今年のWAA建築講演会は王立英国建築家協会名誉フェローで京都造形芸術大学教授の髙﨑正治先生をお招きしました。
「社会芸術としての建築−物こそ人なれ−」と題された講演と対談が行われ、会場となった小野梓記念講堂は学内外から約200名の方々が来場し、ほぼ満席の状態。
レクチャーでは14歳で建築を志し、人間であることや作品であることに傾注された学生時代、国際コンペでのグランプリ受賞を契機に渡欧、異文化と格闘しながら建築的思考の基盤を築かれた頃のことや、最新の被災地支援プロジェクトまでの代表作品を解説。時流に流されず一貫して、社会芸術としての理念の具現化へ腐心された姿勢と飾らない言葉が胸に沁みます。赤坂教授との対話を通して繰り返される「個性」発現の重要性。智識化し、形式化し、無個性化しつつある日本の現状への警鐘。私達の多くが、頭を情報で満たしているものの、心を虚しく見失っていないだろうか。 明晰な良識に裏打された強く優美な造形形態、随所に散りばめられた洞察力に富んだ人生訓のようなフレーズ。人間が人間らしく、日本人が日本人らしく、この困難な時代を決然と生きていくために必要なスピリッツを心中に蓄えた1日でした。
2012年12月3日