THE FIVE SKINS

 フンデルトワッサーは オーストラリアの画家で、自ら環境問題を考え実践しました。

 人間は生まれつきの皮膚、衣服、住居、社会環境、地球環境という5つの皮膚を持つという彼の思想は、何よりも住む人間を中心に考え、体の健康、心の安らぎ、その人の生き方を実現することを基本にしています。衣服は自然素材のものしか身につけず、植物を植え、壁に緑を這わせ、中古ヨットで世界中を放浪し、人や環境に負担をかけないユニークな環境保護運動を貫きました。建築の合理主義を嫌い、ウィーンの近代建築の祖ともいえるアドルフ・ロースを名指しで批判してさえもいます。

 晩年に手掛けた20を越える建築作品は何れも有機的な形態と繁茂する植物が特徴的。タダでもいらないと散々に言われ通したと、自身が述懐しているように氏のデザインには批評と賞賛が別れるところですが、心理的にも身体的にも負荷が高い、生き延びる為の「早い思考」よりも、全体を俯瞰し積み重ねていく事を決断する「遅い思考」が重要であることを教えてくれます。

 

2015年9月24日