2年振りのWAA建築講演会、京都大学大学院教授の岸和郎先生をお招きして「デッドエンド・モダニズム をめぐって」と題し、昨日小野記念講堂で開催されました。
講演では、ローマのパンテオンやフィレンツェの孤児養育院など幾何学によって構成された古典建築から始まり、シンケルやジョンソンから学んだ自由に創作する感覚、スミッソン夫妻の建築から受けたザッハリヒな秩序主義など示唆に富む話が続きました。また、政治とファシズム建築のデモニッシュな影響力については、建築家として思い止まる「3mの良心」が必要であり、さらに昨今の商業建築においてモダニズムが「消費」されている危うさについても鋭いクリティークが提示されました。
1970年代後半、ポストモダンが席巻する大学院時代に、誰も目を向けなかった土浦亀城の作品や「ケーススタディハウス」へ傾けた研究は静かに醸成され、後のご自身のプロジェクトへと結実。古典から近現代のモダニズム建築までを並列して分析、解読する広角な視点の形態分析や研究活動と設計活動の両立的思考は、アイゼンマンに影響を受けたと明かされ、確信やロジカルに基づいた判断にも常に絶えざる反問と俯瞰が繰り返されている様です。
数年前からファッション業界では、ニューヨークを中心にノームコア(normcore=nomal〈標準〉+hardcore〈コア〉)、つまり普通を先鋭化した「究極の普通」がトレンドですが、岸先生の講演を聞き乍ら、その言葉を重ね合わせました。既知の歴史や見慣れた事象を再読し、先鋭化する心には、困難なデッドエンドの隙間に差す光明が見えて来るに違いありません。