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 篠原一男は1960年代前半に「住宅は美しくなければならない、失われたのは空間の響きだ」と言いました。

 今年の軽井沢セミナーの企画で、念願の谷川さんの家と土間の家を拝見しました。

 篠原の初期の作品は単一の主題を最大限に単純化した表現によって、生活空間である住宅に日常を超える空間の力を強くしています。著作の中で、「ミニマリズムは最小限の労働によって最大限の効率を得る効率主義ではなく、余分な成分と断定したものを気の済むまで削ぎ落とす、効率の悪い繰り返し作業である。」と語っています。篠原にとって、住宅は敷地条件や家族構成、施主からも自由であり、設計は洗練や緻密化によるものではなく、機能までの全てを一瞬に古くさくしてしまうような新しい構成を発見することでした。単に機能的であることは、まだ計画論や工学上の水準であって、美学や数学の水準に達していないということでしょうか。

 インテリアの土の触感が、意外にも人間から最も遠い存在に感じました。